2014年5月31日土曜日


ひさびさに「喫茶てげてげ」へ。旅の報告、広島、尾道で持ち帰った資料などを見せて面白さを語る。常連のお客さんでやはり佐世保をもっと変えたいねという話になる。現状でもいいんじゃないという方もいたが、いい部分はそのままに、今いる場所がもっと面白くなればなと思うのだ。その手段は定まってはいないのだが…。

熱く語りすぎたのか、アイスコーヒーにメロンのアイスまで食べて、体を冷やし過ぎたせいか寒気がして、ちょっと調子がおかしくなる。白湯で落ち着いてよかった。

夜になり、「地球屋」でチラシを見つけた、こうばる ほたる祭りへと繰り出す。第27回というからなかなか長いお祭りだ。佐世保の石木ダム建設予定地とされている場所柄、石木ダム建設反対の立場の方が主催しているお祭りのようだ。

会場の岩屋郷へは川棚駅から車で10分。体調不良もあって出遅れたため、着いた頃にはお祭りの終了時刻と被ってしまい、帰る車と僕らみたいに行く車が狭い道を離合できないため、にらめっこ状態が続く。何より、お祭りに来ている車が駐車場ではない路肩に停車しているのがさらに渋滞の元になっている。血管がつまるというのを映像に表したような状態ってこういうことじゃないかなと思った。お祭りが終わって歩いているおじさんが率先して先導してくれて助かったが、27回もお祭りをやっているのだから、交通整理の人がいるべきではないだろうか。規模の小さいてげのいちでも最低2人は交通整理を頼んでいるというのに。

不満はさておき、肝心の蛍の方だが、最初は疎らだなと思っていたが、川の方に近づいてみると、見事な蛍の数!それに川棚の山奥であるこうばるの圧倒的な星の数。出遅れたのが功を奏したのか、車がいなくなった分、くっきりと認識できる。なんとも幻想的な光景にただただ佇んでいた。この星空、真冬だったらさぞやすごいだろうな。

遅くなったので、帰りは「大阪王将」で餃子などを食べる。エンヤが流れたかと思えばSPEEDがながれたり予想できない選曲センスは時にスリリングで脱帽した。

2014年5月30日金曜日

ここ数年、東京からこちらへ戻ってきて、Facebookを活用したベンチャーを興している人物がいるのだが、そのことそれ自体はいいのかもしれない(明らかにFacebookに溺れすぎている感じはする)が、如何せん、本人が気持ち悪すぎて生理的にゾワッとする。

ゾワッとするなら話はそれまでだが、逆に自分の中の悪趣味を愛でるスイッチが入ってしまってFacebookの写真をチェックする始末である。そのナルシスト入った自撮りの数々にはたまらないものがある。向かう方向性とか目的はまったく違うが、その情熱は見習うべきものはある。

2014年5月29日木曜日

吉田秋生『海街diary』の実写映画化のニュースが飛び込んできた。

http://eiga.com/news/20140527/10/

とかく、マンガの実写映画化にはネガティブな話題がつきものだが、この作品は読んでいて、小津安二郎や向田邦子のような情感を感じさせる素晴らしい作品だと思っていたので、この実写映画化には違和感を感じない。肝心の監督も是枝裕和というから期待感が高まるというもの。来年の公開が今から待ち遠しいものだ。

2014年5月28日水曜日

2014年5月27日火曜日


浅野モオムさんが明日、岐阜に帰るというので、最後の晩をご一緒することになった。
「九州と言えば、原榮三郎さんという面白い人がいてね」という話になり、数年前に菊地成孔と南博「花と水」ツアーで炎の博記念堂で展示を観ていたことを思い出した。作品とその作家本人の強烈なルックスが記憶の片隅にあったのだ。有名なテレビ番組『11PM』に5分間ほど出演するのに気合を入れるためにでっかいステーキを食べたり、今日はフランス料理のフルコースを逆から食べましょうと言い出したかと思えば、赤いものだけ食べましょうと言ったりと、かなり強烈な人だったようだ。

今度モオムさんが佐世保に来る時は、原榮三郎の妹さんがやっているという、原榮三郎美術館にご案内しなくてはならない。

2014年5月26日月曜日

昨日より疲労感が残っていたためか、逆によく寝れた。
朝からやっている「パン屋航路」で出来立てのパンを頬張りながら、朝の取引をしている八百屋や魚屋の様子は、昼や夜とはまた違う尾道らしい風景である。


アーケードにはスタバやドトールではない、独自の展開をしている「尾道浪漫珈琲」というサイフォンで淹れたコーヒーが飲める喫茶店もある。


コンビニやドラッグストアといった大手チェーンが入り込んでいないのか、意図して入れていないのかは分からないが、「パン屋航路」や「Classico」、「あなごのねどこ」をはじめとした「尾道空き家再生プロジェクト」といった、新しい潮流で確かに変わりつつあるのを感じる。
まだまだ前の世代が大きな顔をして、世代交代がうまく行かない街とは大きな隔たりがあるなと痛感する。経済力が違うとはいえ、文化的に新しいことを試みる人が増えてきている街とはいずれ差ができるような気がしてならない。もちろん、無い物ねだりでブツブツ文句ばかり言っていても仕方ないので、どうにか面白いことを巻き起こしていければなと強く思った。

「あなごのねどこ」をチェックアウト。昨日、酒を交わした方々とお別れをする。たった一晩のほんの数時間しか顔を合わせていないけど、なんだかすっかり打ち解け合った気になるのが旅の醍醐味であり、ここ「あなごのねどこ」に集う人の良さなのかもしれない。


パンで軽くごはんは食べた気でいたのだけど、泊まり客から聞いた尾道ラーメンと呼ばれる以前から有名な「朱華園」の、焼きそばが美味しいという話を小耳に挟む。天候もあまり良くないので、歩いて観光という気分でもないし、後はぼちぼち帰るぐらいしか予定を立てていなかった我々は、急遽、「朱華園」に行くことにした。


これが噂の焼きそば。敢えて焼きそばを頼むというのもチャレンジではある。


いわゆるソース焼きそばとは異なる、オーソドックスな焼きそば。たしかにこれは旨い。


とはいえ、ここに来てラーメンを頼まないのは、やはり勿体ないということで、ラーメンもしっかり頼む。ちなみにこのお店では、ラーメンではなく中華そばと表記するのが正しい。この醤油の濃い味がたまらない。こうしてタイピングしている今、この瞬間、ヨダレを口に溜めながら、食べたくて食べたくて仕方がない。

駐車場の近くにあって、ジーンズをずらりと並べているディスプレイがインパクトがあった「ONOMICHI DENIM SHOP」に恐る恐る入ってみる。感じのいい店員さんというか任されている方の話をいろいろと伺う。これは尾道デニムプロジェクトの一環として開いたお店で、隣の岡山県はジーンズなど紡績工場で有名だが、実はここ尾道も紡績産業が盛んな土地ということで、デニムをPRしていきたいのだという。コンセプトとして、一年間、地元の様々な人に着せて着古した風合いを味わってほしいのだという。

さらに、その母体は、「ディスカバーリンクせとうち」という、「尾道空き家再生プロジェクト」とはまた異なる、尾道に根ざし、新しい風を起こそうとしている企業だという。山師が大手を振って、それに食いつこうとする人たちからは、どう逆立ちしたって出せないこのセンス。おっと、また悪口を言ってしまったが、そんな毒を吐きたくなるほど、この尾道が羨ましくて仕方ないのは正直なところ。


港沿いを走っていたら目についた、この倉庫をリノベーションした商業施設が、先ほどのお店の方が話してくれた「ONOMICHI U2」。

サイクリストの聖地と化しつつある「しまなみ海道」を有する尾道にオープンしたばかりだという。サイクリスト用にサイクリングショップもあれば、カフェにレストラン、バー、そして何と、サイクリスト用のホテルまで完備している。自転車をまともに乗れない身分ではあるけれど、それでもこの「ONOMICHI U2」はとても光り輝いて映る。




いま地方に注目を浴びつつあるように感じる一方、その注目を集める地方そのものの魅力の差があるように感じられる。自分の住んでいるところをなかなか複眼的に見れなかったりするが、こうして旅行して、その土地がものすごく魅力的に映るのはとても刺激を受ける反面、悔しく歯がゆい思いも一方である。この刺激をうまく地元に還元できればいいのだけど、なかなか自分の非力も痛感もするわけで…。何だか愚痴っぽい〆になってしまったが、この二泊三日は刺激だらけで、広島・尾道の魅力をさらに探求できた素晴らしい旅になった。また行くぞ!

2014年5月25日日曜日

今日は広島内での移動日。広島市内から尾道を経由して、今回の目的である「鞆の津ミュージアム」へ。宿は頭の中ではこれだという候補はあるのだが、まだ決めていないという状態。

昨日の運転の疲れが残っていたのか、朝食の時間まで起きれず、チェックアウトの時間ぎりぎりに出る。

広島から尾道へは高速を使うのと一般道とでは30分ぐらいしか違わないので、高速を使わず下の道で移動。途中、猫よりは大きめの動物の死骸をカラスが、その鋭いくちばしで生々しく肉をかっさばいてる様子を目撃する。昨夜、広島の繁華街でも狸に似た不思議な生き物がコンビニにいたり、野性味あふれる広島県を堪能している。

尾道に到着。路地からお寺や海が見えるのが尾道ならではの情景だ。


おもむろにアーケードを歩いていると一気に郷愁に誘われる。住んだこともない尾道という土地に魅了されたのは、好きな映画監督である大林宣彦作品の影響である。とはいえ、たまたまでもあるけれど毎年のように足を運んでいるのは、コンビニやドラッグストアがまだ無かった頃の佐世保のアーケードをどこか彷彿とさせるからなのかもしれない。




意図して排除しているのか、ただ店舗形態として合わないのかは分からないが、尾道のアーケードには所謂チェーン店がない。数年前に物心ついてはじめて訪れた時はシャッター通りのイメージもややあったが、今回訪れてみると、新しく、それも素晴らしいお店が増えつつあるのに驚かされた。



ハード系のパンとベーグルがとても美味しい「パン屋航路」。正直、佐世保でここより美味しいパン屋はないのではと思うほど。店名はおそらく尾道に旧居のある志賀直哉の代表作である『暗夜行路』の捩りだろう。思いのほか時間がなくなっていたので、パンとベーグルを買い、少し先にある、ここも素敵な自家焙煎・豆専門店「Classico」のアイスコーヒーで昼食代わりとした。

車で一時間ほどかけて鞆の浦に入る。宮﨑駿がこの地をいたく気に入り、『崖の上のポニョ』のモデルになったと言われている場所である。
いざ車で中心地に入ると狭い道に驚く。離合したりしながら恐る恐る進む。ただ車で通過するだけでも、その味わいのある街並みに目を奪われる。

海の方に出ると比較的広い道に出たので、ほっと胸を撫で下ろす。ナビはとても便利だが、こういうことがあると物は使いようだなと思った。

駐車場に車を止めて、長閑な海辺の家々の通りを散策していると、今回の「ヤンキー人類学」の展示に合わせて建てられたのかと思うような標石に出くわす。


もっとじっくり散歩していたいが、都築響一さんと上野友行さんのトークショーの時間に間に合わなくなると本末転倒もいいとこなので、「鞆の津ミュージアム」に直行する。


この「鞆の津ミュージアム」は、築150年にもなる蔵をアール・ブリュットまたの名をアウトサイダー・アートと呼ばれる既成の芸術にしばられていない作品を展示する美術館としてオープンした尖った美術館である。しかも鞆の浦という長閑で美しい場所に。


「ヤンキー人類学」。まずはいきなり相田みつをの有名すぎるポエムでお出迎え。ちなみに撮影は自由。アカデミズムを笠に着て、威張っているような上から目線ではないこういう姿勢がとても素晴らしい。ちなみに館内は、ヤンキー文化として展示されているパチンコの音と改造車のアクセルコールの音が反響している。


小部屋には北九州の成人式を成人祭の域にまで高めた立役者「みやび」の衣装や、成人祭の様子を伝えるスナップ群。成人式を体験しない人生だったので、いまだにこういう文化だというイメージが勝手に植えつけられている。


“ガイアが俺にもっと輝けと囁いている”で一世を風靡した雑誌「メンズナックル」キャッチコピーたちもしっかり展示物として紹介。


ファミコンゲーム『くにおくん』シリーズで馴染みはある(思えば、これが最初に接したヤンキーカルチャーかもしれない)が、こうして現物のメリケンサックを美術館の展示物として見ることになるとは思いもしなかった。


デコトラならぬデコチャリ。以前、新門司港の阪九フェリーターミナルに行く途中、見かけてあ然とした物をさらにデコレーションを高めた物が展示されている。福岡、それも北九州シーンはアツい。





かわいいなめ猫がプリントされたスウェット。先ほどのデコチャリも後ろにはミッキーとミニーがフューチャーされていたりと、実はヤンキーは可愛い物がとても好きなのである。
聴いていた音楽がディスコというのも面白い。代々木公園に派生した竹の子族もディスコを聴きながら踊っていたといわれているし、そこからディスコ文化ともきっと繋がりがあるのだろうな。



絶大なインパクトを持つメインフロアに鎮座するのは改造単車、その名も「CRAZY SPECIAL」。こちらも福岡県は筑後から乗り込んで来た。素晴らしいフォルムはベニヤ板で出来ており、このポップなカラーリングはポスカだという。当然、こんな形をしているとスピードは出せないそうだが、ここまで行くともはや芸術の域に達しているなとつくづく感心する。


蔵の中にしっかりと収めたコンパクトなデコトラまたの名をアートトラックもばっちり展示。キティちゃんとルイ・ヴィトンが同居するという、このセンスが素晴らしい。

福岡で都築さんを呼んだSさんと、都築さんマニアの女性と再開。日帰りの弾丸ツアーであるが、他にも大阪や東京、北海道まで都築さんがこの鞆の津ミュージアムに目掛けてやってきている。都築響一さんという熱は伝播し、人を突き動かすのである。

都築響一さん、上野友行さんのトークショーは鞆の津ミュージアムのすぐ近くに位置する「鞆こども園」で行われた。ヤンキーや裏社会をテーマに話をするにはあまりにも相応しくない場所ではあるが、その自由さ、大らかさもまた素晴らしい。

こども園に貼られた、AKB48の岩佐美咲「鞆の浦慕情」に食いつく都築さん。
障害者の作品を展示をするためにはじまった、「鞆の津ミュージアムがどんどん脱線していき…まあ、ある意味、傷害者ですが」とブラックジョークをかまし、更に「でもさ、順番逆だよね。ヤンキー展があり、刑務所良品があり、最終的に死刑囚展にすべきだったね」などと最初っから飛ばしていく都築さん。

上野さんによる、地下格闘技の話。 現在の地下格闘技のルーツは映画の『ファイトクラブ』。当時は「山田うどん」(こちらでいうところの「牧のうどん」のようなロードサイド型チェーン店)の駐車場でやっていたという。ルールは3分1ラウンド。技術やスタミナがないので、それぐらいの短時間だという。ド素人の殴りあいなので見ている方は楽しいという。
ヤンキーは上下関係がはっきりしていて、後輩がしっかりいるので70人とか100人とか平気でどんどん引き連れてくるので、チケットは外部に出回らないという。ふつうの格闘技ファンがなかなか見れないのはそのため。したがって必ずしも強くはないのに、大会の後半に出場する選手は、弱いけれど、それだけ“客”を持っている選手ということになる。

 暴走族向けの雑誌『チャンプロード』の出版社が総額27億円もの詐欺に遭った事件の話題。闇社会とか知っていそうなのに引っかかるというのはいかがなものかという話から、旧車會の集会や地方での各地の動きにメディアがついていけていないという状況からメディア論へ。
ある意味、ひとつの伝説を確立した『小悪魔ageha』の出版社の倒産に伴う休刊、飯島愛の追悼ページが完全にアートだという話。

ファッション雑誌に連載をしていて思ったのは、かっこいいのはそのモデルであって、必ずしも誰しもがブランドが似合うわけではないという話から、誰でも似合う服となると、女ならお水スーツ、男は極道ジャージという。
担当していた女性編集者にお水スーツを着せて写した写真を見せながら、着た瞬間にお水に見えてしまうというのを表す一枚。 こういうお水スーツは通販カタログで購入するという。会社はだいたい岐阜にあり、しかも24時間コールセンターで日英中韓4ヶ国語に対応しているというから、ぶったまげる。

 ファニーな犬のイラストが目を引く、極道ジャージのガルフィー、ルイバーサスの話。撮影をお願いしたところ、Yシャツの上に着るのが通だという。 今回の展示に合わせてやってきていたキメキメの「BIRTHJAPAN」という極道ジャージなどを扱うお店を経営されている石川さんの紹介。農家とフィリピンパブが軒を連ねる中、シャッター商店街の中で悪ガキ製作所の看板を掲げて営業しているという。 当然、周りからは嫌な顔をされているそうで、なかなか大変なようだ。

お客さんが暑いから切ってくれといって持ってきた服を切って七分袖にしたりするというのは顧客の方を向いているという意味で、そこら辺有名なお店とは違うという話もとてもおもしろい。

極道の方のイメージのあるセカンドバッグ、アタッシュケースはスーツ、ジャージどちらにも合うという話も慧眼。 上野さんが以前セカンドバッグの中身は何かというアンケートを親分にとったところ、本が多く、読書家だったりするという。そのきっかけが刑務所に入ってやることがないから読みだしたというのが面白いし、何を読んでいるかというと、色々読み漁った末にベストセラーになるという。例えばそれが東野圭吾だったりするのが面白い。凝り性なのでイヤフォンマニアになったり。聴いているのがヒップホップや、若い愛人経由で西野カナだったりするという。

ヤクザ文化とは切っても切れない刺青の話。プロとアマチェアの見極め方。アマチェアは自慢するかのように出しているが、プロは隠すという。専属の彫師を雇っているというのも凄いし、彫師としてもその方が稼げるのだという。 いまは分かられないように、隠語を使う。例えば組のことを会社と言ったり、しかしその世界に浸かっているせいか、おじさんと言っているつもりが叔父貴とかパンピーが使わない単語が飛び出したりするのはご愛嬌か。  ベルギー人のカメラマン、アントン・カスターズが撮ったヤクザの写真集『ODO YAKUZA TOKYO』について。アントンが歌舞伎町で呑んでいたら、ふらりとヤクザの方が入ってきて、そのかっこいい佇まいにすごいなと思って、一年ぐらいかけて口説いて写真集を撮ることになったという。ただし日本では発売をしない、写真展をやらないことを条件に。日本のその手の雑誌記者が撮るようなヤクザとは違った、センスの良さ、こう言っては何だけどかっこよさを感じる。いつかこの写真集を手にしてみたい。 写っている合宿の姿を見て、これは右翼団体ではないかという上野さんの指摘。政治結社にすることで合法的に恐喝できるようになるから右翼団体をつくることが多いのだという。

さらにヤクザは野球が好き。刑務所の中でソフトボールを覚えるのがきっかけになるという。いままで、まともなバットの使い方を知らなかったという話に爆笑。シャバに出てきて草野球チームをつくることも多いらしく、勝負ごとにこだわるせいか、次第に有力高校のピッチャーを連れてきたりしだす。そうなると向こうも助っ人を投入して、代理戦争状態になって、最終的にヤクザはベンチに座っているだけ、という話は絵面を想像しただけで笑えてしまう。

長い懲役が出世するシステムが昔はあったのに、今はなくなったという。 シャバに出たらすごい額の慰労金などがかつてはあった。 関東連合はあくまでもヤクザではなく元ヤンだという。早飯早糞が基本。親分より先に橋を置かなくてはいけないので、結構なスピードになる。親分もそうやって育っているので当然早い。例えばカップ焼きそばのUFOを三口で食える。

続いて、『刑務所良品』という本も出版している都築さんの刑務所話へ。 8:2の割合で男子が多く、女子刑務所は全国で7つぐらいしかない。男子はキャラ(性格)や罪で分けられる。いちばんすごいのは千葉刑務所。取材に行った当日、職員と一緒にご飯を食べたが出てきたのが、インドネシア風のカレーに春雨サラダ、おすましという凝った献立。元帝国ホテルのシェフで懲役刑のやつがいるからだというのが理由だそう。千葉刑務所はお神輿をつくっているという。刑務所内での全国のコンテストがあり、そういう時は一致団結して作るのだという。
刑務所で作られる品々は、オリジナリティを求めず、いちばん普通の物をつくらせるということを前提としている。ひとつだけだと大したことはないかもしれないが、全部刑務所製品で集めたらどうなるかというのを表した写真がなかなかのインパクト。ある意味、それが日本の標準を表しているとでもいうべきか。

岩国の女子刑務所の話。『女囚さそり』の世界と思いきや、すごい高齢化。エアロビをやっていて、アバの「ダンシングクイーン」が流れていたりするというからものすごい。 7割はシャブ中。ヤンキーの間ではシャバに出た直後はモテキだという。理由が締りがいいため。とはいえ、高齢化している現在はまた変わってきているのだろうか。ASKAの話も含め、遅咲きで悪いことをはじめると止められなくなるという。
非行をするなら若い内と、説得力のある話を“こども園”でする上野さん。

北九州は左翼グループが強く、北九州の屋台はお酒が出ない。立ちションベンすると汚いからやめてしまえというのがその理由だという。北九州は物騒だというが、ヤクザが無差別に襲っているわけではなく、その左翼グループをピンポイントで襲っているからだという話には慧眼。むしろヤバい地域は久留米、大牟田で流れ弾が飛び交う、かなりのデンジャラス・ゾーンだという。

広島市現代美術館でやった都築響一さんの展覧会「HEAVEN 都築響一と巡る社会の窓から見たニッポン」で、その圧倒的なインパクトをもって展示されていた単車の話。広島市で暴走族撲滅運動をやっていた時期と重なっていたので、ちょっと物議を醸したという。
暴走族は絶滅しつつあるが、もっと絶滅しているのがレディース。ということで、DOMMUNEでも紹介していたレディース向けの雑誌『ティーンズロード』が作ったビデオを上映。「全国制覇を目指しているんで、夜露死苦〜(夜露死苦!!)」 のリフレインが頭にこびりつく。アクセルコールを外国人に見せるとすごく驚かれる。日本だけといってもいいし、これこそがクール・ジャパンなのかもしれない。
都築さんファンの間ではご存知、水戸黄門のアクセルコールには爆笑とともに拍手まで巻き起こる。 先輩ごとに曲目が決まっているという。勾留されている仲間がいたら、そいつのために持ち曲を奏で、エールを送るといういい話はたまらないものがあった。


トークショー終了後はサイン会。都築響一さん。「性技の味方スーハーマン」Tシャツに反応してもらったのは嬉しかった。


上野友行さんに、となりにいる強面の方が「BIRTHJAPAN」の石川さん。


福岡からとんぼ返りするSさん達をバス停で見送り、日が沈んだ直後の群青色のような鞆の浦の景色に見惚れる。今度はじっくりと観光したいな。

駐車場へと向かっていたら、先ほどのトークショーで目についた女性2人と外国人の男性1人の3人組とばったり。初対面もいいところだけど、同じ時間を共有すると何だか互いに声をかけやすくなる。訊けば、今夜泊まる宿は尾道のゲストハウス「あなごのねどこ」だという。実はこの時点で本日の宿は決めていなかったし、実はそこが本命だったので、じゃあ僕らも泊まりますと宣言。また後で会いましょうといって、それぞれ車に乗り込む。こういう楽しさこそ、旅の醍醐味という感じではないだろうか。

車の中で電話をして宿の確保も完了。1時間弱で尾道へ戻る。明日、行く時間があるか分からないし、千光寺からの夜景って見たことなかったので行ってみることにする。昼間は有料の駐車場も、夜は自由に止めていいようで、ちゃんとライトアップもされている。



夜景は佐世保や長崎に比べると見劣りはするが、これはこれでまた違う良さがある。


入り口は昔の小学校をイメージしたカフェになっている「あなごのねどこ」。新潮社『考える人』の特集、日本の「はたらく」で、尾道空き家再生プロジェクトとして紹介されていたので以前から気になっていたのだった。
尾道は過去に別の2つのゲストハウスに泊まったことがあるが、楽しさ、独創性、完成度ではここが一番。

カフェは通らず、その、うなぎの寝床のような狭く、細長い長屋を抜けたところにゲストハウスの受付がある。


チェックインして、設備の話を聞いた後は、尾道の夜の街で腹ごしらえ…のつもりが、行きたいお店がタッチの差で閉店、もしくはお休みだったりで空振り。

たまたま開いていた「居肴屋 馬口」に入る。かなりメニューが豊富だが、若いオーナーが一人で作っているというから驚いた。屋号の馬は、ここら辺で馬刺しを食べるお店がなかったので、自分がやろうと思ったという。熊本の馬肉を使用しているとのこと。せっかくなので瀬戸内で採れたものを、ということで食べたシャコが美味しかった。


「あなごのねどこ」に戻ってきた頃には、先ほどの3人組や1人旅で来たという泊まり客、当直のスタッフらで出来上がっていて、何とも和気あいあいとしていて、とても楽しい雰囲気。理想のゲストハウスってこういうことを言うんじゃないかなと思ったりした。


何とも充実した1日であった。心地よい疲れがとても良い睡眠導入剤となった。

2014年5月24日土曜日

昼前に佐世保を出て、高速でひた走ることおよそ5時間。
途中、めかりパーキングエリアで関門海峡を眺めたりと、ちゃんと休憩を取りながら歩を進める。


すでに何度かこのルートを通過してはいるので印象としては全然遠い感じはしない。そして山口県が広く長く感じるということ。

広島に到着する頃にはすっかり夕方である。ナビ通りに着いた筈が、ホテルがやや見つかりづらいところにあったために、何回かぐるぐると周ってしまった。
ようやくたどり着いた、「ホテルアクティブ! 広島」は今どきのビジネスホテルらしく、とても清潔でお値段もリーズナブル。

「ヲルガン座」である、ボギーさんとモンドくん親子が出演する「ヲルガン座ディナーショー ボギーのライブ+モンドくんの似顔絵屋さん」まで時間があったし、お菓子ぐらいしか食べていなかったから、当然お腹も空くわけで。やはり、広島といったら広島焼きでしょー!というわけで、それもどうせなら観光客丸出しで有名店「八昌」に突撃することに。


まだ暗くなる前だというのに、すでにしっかりと行列が出来ていて、人気店の威力に面食らう。でも、せっかく来たのだから並ぶことにする。

それにしても、この八昌の周りは歓楽街で、すぐ裏にはストリップ劇場があったりする。女性の身体を表したこの看板なんてたまらない。


女性が寝そべったようなこの装飾とか素晴らしいの一言。いまだにちゃんと営業している。


怖いもの見たさで入ってみたくもあったが、怖気づいて踏み込む勇気がなかった。


手前にある、「コインランドリー ワールド」も素晴らしい。ディ○ニーから訴えられたらアウトなイラストやロゴの配置もかわいい。


中の感じも素晴らしく、空き缶の位置や新聞はスポーツ新聞であったり、完璧としか言いようがない。


すっかり暗くなった頃にようやく入店。1時間近くは待っただろうか。食べログの口コミを参照にして、広島焼きを注文しながらも、牛のアキレス腱を蒸したというすじポンやチャンジャをつまみに頼んでいてよかった。広島焼きが出てくるのに20〜30分ぐらいはかかったから。
このすじポンが絶品で豚足よりもコリコリした感触でビールとの相性も抜群。チャンジャも自家製なのか新鮮な感じでとても美味しかった。


さて、広島焼きである。これが定番のそば肉玉。卵の黄身がちょうどトロッととろけ出して、お肉のカリカリ。広島焼きでそんな違いあるのかなと思うが、やはり別格な気品すら感じつつ、ぺろりと平らげる。これで一人前の半分であるが、つまみとビールを食べていた胃袋にはちょうど良かった。


ビールジョッキ2杯でわりとへべれけになる経済的な身体なので、酔い覚ましにヲルガン座まで徒歩で移動。歓楽街を抜け、天井の高さと規模の大きさが熊本に似ているアーケードを抜けると、そこは原爆ドーム。


期せずして、原爆ドームに来るとは我ながら思わなかった分、ライトアップされた夜の原爆ドームは、厳かで背筋が伸びる気持ちになる。



たどり着いたヲルガン座は、昭和の匂いをそのまま残す佇まいのビルを一棟丸々使って自由にやっているという何とも面白い空間で、想像していたよりもおしゃれ感がありつつ、サブカル色も出ている素敵な空間で面白そうな人が集うたまり場のようにもなっていて、佐世保にもこういうところが欲しい!と本気で思ってしまった。


着いた時間も遅かったので、ボギーさんのライブも終了してたかと思ったら、ちょうどアンコールで滑り込みで間に合ったかたち。フィッシュマンズの「いかれたbaby」のカヴァー。ノリの良いお客さんの拍手は鳴り止まず、思わずボギーさんも「すごいね、薬でもやっとっちゃない?」と、ご当地出身のASKAを思わせる話題のネタからの再アンコールでは、ASKAではなく同じ福岡出身の海援隊「贈る言葉」のカヴァー。金八先生のものまねも上手いボギーさん、お客さんもノリノリで最後は胴上げで大団円。旅先でいいものを観た。

モンドくんの似顔絵屋さんはすでに予約の段階でいっぱいだったので諦めていたけど、本人からデビュー画集『モンドくん』を購入できるとは思わなかった。ちゃっかりサインや記念撮影までしてもらった。
  • モンドくん





3階はイベントスペース、4階は廃墟ギャラリー。こんな隠れ家、というか楽しい秘密基地。佐世保にもあればなと痛感した広島の旅の初日であった。