2014年4月20日日曜日

この日で完全に見おさめ、嬉野観光秘宝館のお葬式に行ってきた。


建物を前に駐車場誘導する係の人がいて、思わずびっくり。たしかにチケットは完売しているのは知っていたけど、あのいつもガラガラだった嬉野観光秘宝館に人がいるということが俄に信じられないのだ。

ご覧のとおりの長蛇の列。


都築さんや、福岡のトークイベントでお会いした方々にもご挨拶したりで、先日からそのままお祭りが続いてるという感じでワクワクが止まらない。
開館以来、最もお客さんが来ていると思われるのが、ある意味で秘宝館らしいのかも。

いつもの順路とは違い、まずは売店の方へと通される。売店にひしめき合う人の群れ。ここは夢か夢か現か幻か。否、秘宝館である。


嬉野観光秘宝館の秘宝のひとつである“性技の使者”スーハーマンのTシャツはすでに完売!バッジは無事にゲット。


空腹を満たすフードがまたヒドい(笑)。ここではおっぱいもっちもっちを購入。


アダルトビデオの上映コーナーだったプロジェクター部分を使った都築響一さんのトークショー。


1983年に誕生した嬉野観光秘宝館は、『おしん』、ディズニーランド開業、ファミコンあたりとタメ。そう考えるとバブル前夜という感じだ。いまだとお金はあっても、こういう発想には至らないだろうな…。最盛期には30館近くあった秘宝館も熱海と鬼怒川の二館だけになった。まだどちらも行ってないが、特に鬼怒川には早めに行かないといけないと思った。
海外にもセックスミュージアムはあるけれど、学術的なインテリな視点が介在するが、日本の秘宝館はもっと純粋に「エロっていいよね」という、実直なものだ。

ここで映像を流しながらのトーク。70年代初頭に出来た秘宝館のはしりと言われる、伊勢にあった元祖国際秘宝館。オーナーは真珠の販売で儲けてはじめられたそうな。
秘宝館は商標登録をしてなかったから(そもそも真似されるとか観念がなかったのかも)、全国に増殖しやすかった要因でもあったという。
ピークには千人単位で来ていたという。それだけ来ていたという事実に驚く。やはりこの時代の日本のおおらかさというか猥雑さというか、突き抜けた感じはいまは逆立ちしても出せない。残念ながら。それにしても、当時の映画でロケなどに使われたりしていないのかな。
秘宝の数々を堪能した後に、最後のアトラクションで本物の馬の交尾ショーっていうのが、あまりにもすごい。
団体旅行文化の産物とも言えるそうで、おじさんが喜ぶと思いきや、おばさんの方が意外と多かったという話もとても興味深かった。

もうすでに一部動かなくなっている嬉野観光秘宝館の秘宝の数々を紹介。2005年にはまだすべて稼働していたのか。今日ライブをする倉地久美夫さんのお父さんで、画家である樺山久夫さんのエアブラシで作られたエロ絵の数々。

つづいて、先日も紹介された『独居老人スタイル』の話から、本宮映画劇場の話で。成人映画のポスターの数々。先日の福岡では見なかった『ねこと人間と性』のデザインが良すぎる!これポスター化しないかなぁ。



秘宝館に絡めて、ラブホテルの話。回転ベッドが多くつくっているのは実はフラ○スベッドだという、サイトでは一切触れられてないようだが。自分たちのあられもない姿を万華鏡のように見せるという発想が素晴らしい。大阪のラブホテル文化がアツいとか興味が尽きない。

もっとも凄い投稿エロ雑誌の『ニャン2倶楽部Z』の話。パートナーをいろんなシチュエーションで撮っていたりするのだが、ツメの甘さというかほつれ感がたまらない。

ラブ・ドールの話も強烈で、パートナー(ラブ・ドール)をスキー場に連れてって、スキーウェアを着せて写真を撮る情熱とか、秘宝館を通し、まだまだこの日本のエロ文化は元気だし、これからも日本社会の下支えを担っているのだなと思った次第。

都築さんのトークが終了し、ハーレム(ステージ)側が開放される。いつもとは違い、DJブースからはラウンジ系な音楽が流れていて、とてもいい雰囲気。


特設ステージ。下は木でしっかり作られていた。


『地獄の黙示録』をモチーフにしているのだろうか?


“酒池肉林”という字面のイメージを表現するならば、こうなるだろう。


「ハーレム」とは。


ハーレムに見惚れていたら、ぼちぼちライブ開始の時間。

トップバッターは、渚ようこ。はじめて聴くが、クレイジー・ケン・バンドの横山剣プロデュースなどで、その名前は知っていた。生演奏ではなく、ダンサーを従えてオケによる歌というスタイルが、平成だけど昭和の香りがつよくてたまらない。おそらくオリジナル楽曲なんだろうが、昔の映画で聴いたことあるような気持ちになってくるのが心地いい。途中、渚ようこが抜け、ステージにあがった長身の女性、いや男性。宝塚の男役といった出で立ちでビシッとキメた白いスーツで歌いながら、寸劇を経て、ドレス姿になったかと思えば、最終的にはサンバのカーニバル衣装になって、これには持って行かれた。エルナ・フェラガ〜モという方だそうだ。
ふたたび、渚ようこさんの歌に戻り〆。ダンサーのデリシャススウィートスのインパクトもあって、トップバッターとして完全に盛り上がっていた。

つづいて、マエケンこと前野健太の登場。
いつもの感じでクスっと笑わせる独特の間が楽しい。ハーレムの人形を弄ったり、嬉野の旅館「大村屋」のカスタネット使いヘネシー吉川さんとコラボしたり、今回のイベントの主催者フジトミタクミさんに「ねえ、タクシー」の頭の部分を歌わせたり。人形を抱きながら演奏しようとしたり。とはいえ、演奏も圧倒的な存在感で引き込ませるのがマエケン。今回の「ファックミー」も胸に迫るものがあったが、後半エフェクターで反響させてマイブラみたいに混沌としたノイズ音が、ハーレムというこれまた混沌とした世界の音をかき鳴らしているようだった。
Facebookにアップされていた写真だが、最高にかっこいいよマエケン。


ライブのトリを飾るのは、倉地久美夫。もっとも前知識のないアーティストだが、先ほどの都築さんの紹介により、嬉野観光秘宝館でのライブのトリを飾るのに相応しい物語を感じる。独特の風貌から、フラメンコのようにギターをつま弾かせながら発せられるテノールボイス、それに現代詩のような特異な歌詞。これがなかなか強烈で引きこませる。
本人のMCも、ボイスレッスンに通っている話をして、「君ももっと人に受ける曲を歌ったらどうかね?」と、声色を変えて先生を演じてみせたかと思うと、その曲が小田和正の「ラブ・ストーリーは突然に」をはじめだしたり、楽譜をマイクにズボッと挿して譜面台にしたり、かと思うと、略歴を見ると菊地成孔とアルバム作っていたりと、奇才とはこういう方を言うんだろうなぁ。この未知な感じがとても面白かった。
墓参りよりもこの嬉野観光秘宝館に寄っていたというから、トリを飾り、天国でお父さんの樺山久夫先生も喜んでいることだろう。

ライブ終演後は秘宝の数々のオークション。


燃えよマラゴンや、“性技の使者”スーハーマンなどの大きめよりも逸物の形をした順路などの持ち帰りやすい物の方が値がついていた。


樺山久夫先生の絵も人気を博していました。揃いで買う強者も。


オークションの最中、今日はハーレムしか観れていないので、まだ残っている秘宝の数々とお別れを告げるために展示スペースへ。

長崎県民のはしくれとしては、“エロチック・ファンタジー ながさき オチンチ祭り”はやはり感慨深いものがある。


都築さんも話されていたが、このフォントが素晴らしい。ステッカーにしたいぐらいだ。


秘宝の一部はすでに撤去されていて、もぬけの殻だったが、こういう状態を観るのも最初で最後だろうからと、パシャリ。



もうほとんど勃たな動かなくなった“性技の使者”スーハーマン。


なんの捻りもなく、ただの“モンロー”。アナログな作りなので、通風口から巻き上げられたスカートの中身をちゃんと拝みました。


“燃えよマラゴン”のヌンチャクはフォルムも最高!


人気の有明夫人は、オークションにもかけられず非売品扱い。


「有明の恋人」はカニさんがすでに動かず、タオルをどけてくれない…。


あまりにも見事な“喜心金精神様”こちらもすでに非売品扱い。どこかで祀られることにでもなるのだろうか。


こちらはバッヂにもなっている、タイポグラフィとしても素晴らしい“飛び出す万珍”。ホログラムを駆使した立体的な秘宝だが、こちらの効果音が素晴らしい。なんでこんな音になるのかわからないけど。



嬉野名物茶摘み娘(ウソ)。このアングルだと普通にマジな盗撮みたいだが…。


もう一つの穴から覗けば…ビャー!と引っ掛けられる。のだが、こちらもすでに運転終了…。


すでにオークション用に撤去されてたり、動かなかいものばかりだったが、それでも最後にこうして秘宝の数々を直に観れて良かった。


オークションに戻ったら、最後に嬉野観光秘宝館のオーナーの挨拶があった。
この嬉野の片田舎(斜向かいにあるのはモーテルタイプのラブホぐらい!)で、30年間もよくぞ持ちこたえてくださったと感謝の念しかない。ただひっそりと閉じる秘宝館の中でも、こうしてイベントという形で盛大に見送ってもらえた嬉野観光秘宝館はとても幸せだったように思う。このイベントを企画してくださった秘宝館フェス実行委員会の方々にも感謝の気持ちでいっぱい。本当に素晴らしい秘宝館のお葬式でした。合掌。


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