昼飯にと武雄の某南インド料理のお店に直接行くが、何とこの日は仕込みのために生憎のお休み。確かに前もって電話で聞いた方がいいのは確かなようだ。
そういえば『d design travel 佐賀』で紹介されていた「井手ちゃんぽん」は行ったことなかったことに気づく。しかも本店だから美味しいに違いない。
武雄温泉や武雄市図書館といった馴染みのスポットを抜け、ひたすら国道を真っ直ぐ進んだ北方という地域に入る。北方は武雄市に属するが、もともとは北方町だったそうで市町村合併で武雄市に編入され、北方町という町は消滅していることになる。そんな武雄からやや遠い位置の北方を走っていて、出てくる独特な看板。近くにも支店がある「牧のうどん」を思わせるようなロードサイド型のお店だ。
土曜のお昼時を少し過ぎた時間とはいえ、店内は満席という盛況ぶり。否が応でも期待が膨らむというもの。少し待ってから店内へ。
メニューには屋号のちゃんぽんだけでなく、丼ものや餃子、うどんもあるようだ。「牧のうどん」で、そばを頼むようなものであまり人気は無さそうなのだが、どうなんだろうか。それと長崎のちゃんぽん屋と違い、皿うどんが無いのもひとつの特徴と言えるのかもしれない。
腹具合がそこそこだったので、普通のオーソドックスなちゃんぽんを注文。
なるほどこれは旨い。特に何か際立って特徴があるわけではないのだが、これがシンプルで旨い。にんにくが少し効いているのと、塩加減が強すぎず、ちょうど良いというところか。こってりはしているのに何故かもたれない。また何度も食べたくなる優しい味。待っている間に話した老夫婦が、本店が一番美味しいと仰ってたのが印象的である。
ちゃんぽんを食べ終わり、『d design travel 佐賀』に載っているお店でお茶でもしようと思っていたが、そこまで寄ると映画の上映時間に間に合わない可能性が高いことが判明。今回はお店に寄るのを断念。そのまま佐賀市内へと直行する。
「CIEMA」の周辺である佐嘉神社の近隣を散策する。ぼろぼろに朽ち果てたお店や、昔、営業していたお店の跡…と思って近づくと、中で普通にテレビが点いていて営業していたりその境界線が曖昧な感じもある。婦人服店の店先にブラックモンブランのアイス冷凍庫が置いてあったのには、さすが佐賀が誇る竹下製菓のお膝元という感じである。「街なか かわらばん」というフリーペーパーが目を引く。これも尾道のような空き家再生プロジェクトに近いものだろう。福岡の影響をもろに受けている佐賀だけに、どうにか変えていこうと試行錯誤をしているようだ。佐世保も決して安泰ではないし、もっと良く、いい意味で変わっていければいいのにとはいつも思う。
「CIEMA」内にある「cafe CIEMA」でコーヒーと月替りのケーキ。梅酒をつかったチーズケーキ。甘すぎず、上品な味わいで美味しい。コーヒーも含めて、劇場内への持ち込みも可能みたいだ。ポップコーンとコーラじゃなくて、コーヒーやケーキを持ち込めるところが「CIEMA」のユニークなところだなぁ。
さて、観た映画は敬愛する大林宣彦監督の最新作『野のなななのか』。
一つ前の作品になる『この空の花 -長岡花火大会』が凄いことになっているという情報を得ておきながら、劇場公開時には行けず仕舞いだったので、なおさら今の大林作品を観てみたいという気持ちが高まっていたところに「CIEMA」での上映。そして劇場で大林作品を観るのははじめてである。
御年76歳となった、大林宣彦監督自身が死と向き合っているかのように感じられた。死を考えさせられることは生を考えるということでもあるように思う。本作品、いや、おそらく一つ前の作品である『この空の花』も、死と生の境界線が曖昧な、ある種のマジックリアリズムとでもいうべき作家性が全開した作品ではないだろうか。3時間の長尺も一向に気にならないまま、その熱量に圧倒とともに引き込まれていた。
冒頭からその突飛な演出が全面に出ており、いささか面食らったのも正直なところだが、それもミステリアスな鈴木家や信子の存在、それに芦別の大自然が織りなす美しい景色にどんどん引き込まれていく。
そして、大林監督が伝えたいこと残したいことを愚直すぎるほどストレートに描かれている。それは反戦へのメッセージだ。
領土問題などで緊張する北東アジア情勢、安倍政権の集団的自衛権の行使容認問題など、戦争への距離が近づきつつあるように感じられる昨今、この作品で大林宣彦監督が込めた平和への希求はとても力強く響いた。
観終えた後は思わぬ熱量を浴び、呆然とした感じが抜けないまま、パンフレットを購入。後でまた読んで、この作品を思い出したいと強く思う。
- 野のなななのか パンフレット
そのまま家に帰るのも、何だか惜しい気分なので(こういうところも込みでの劇場体験の良さだよな)、「cafe bar Algernon」へ。
エスプレッソを冷たくし、泡立てたこの飲み物が美味しかった(名前は失念)。
コーヒーを一口飲み、「苦い…けど癖になりそう」と『野のなななのか』で劇中に常盤貴子、安達祐実がつぶやくセリフをマネしたくなる。こういうところも大林宣彦監督って上手いんだよなぁ。
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