年代物の車は主治医(メンテナンスする人)を先に見つけなくてはいけないというのはなるほどと思った。ブルブルと唸るエンジン音と振動が堪らない。
博多駅に着いたものの、まだ開店していないお店が多く、うろうろした挙句、地下街のベーグル屋で済ませる。先生とはここでお別れ。また僕の知らない面白い遊びを教えてもらおうと思う。
「東急ハンズ」でパーティーグッズを眺めるもこれといったものが見つからなかった。
歩いて駐車場へと戻ると、いままで気付かなかった家屋に20人近く外で待っている人の姿が目に飛び込む。一体何だろうと思い、待っている人に訊いてみると、なんと豚ステーキのお店だという。看板もなにもない、一見家屋だと思っていたその建物は、よくよく見ると入り口の塀に豚の形が掘られたロゴがあるじゃないか。何ともシャレが効いた佇まいである。「十一」、いつか行ってみなくては。
大橋方面へと移動し、「organ」の開店まで「ブックオフ」で物色して待つ。
- あだち充 / いつも美空
- あだち充 / スローステップ
どちらも一冊100円なのであだち充研究と称して計7冊お買い上げ。
「organ」は葡萄畑というバンドや、フラット・フェイスというユニットで音楽活動もしていた武末充敏さんがオーナーのセレクトショップ。ここに訪れるのは二回目だが、以前より興味の幅が拡がっているせいか色々なものが目に留まる。とはいえ、おいそれと手が出せるのが限られるのではあるが。
- 岡本仁 / ぼくの香川案内
- Iwamura Ryuta / Monday Impression
- Noritake / SBN
Iwamura Ryutaのアートワークを手がけた、Noritakeの個展があっていたそうで、いくつか残っていたかわいい商品の中からバインディングノートを購入。
天神へと移動し、ライブ会場を確認した後は「パルコ」などを眺めつつ、「LOFT」でパーティーグッズを見るが、これまたピンと来ず。そうこうしていたら、時間がなくなったので、「friscoバーガー」に向かう。
ここのハンバーガーをはじめて食べた時、これほどシンプルで旨いハンバーガーを食べたことがない。そう思うほど衝撃を受けた(違う意味でも衝撃を受けたのだが…)。正直、佐世保バーガーを有する佐世保市民としても完敗だとも思った。
60年代のアメリカを知るマスターが培ったクラシックなスタイルのハンバーガーは、炭火で焼き上げた肉は余分な油が落ち、見た目と反し、さっぱりとしている。炭の匂いがとても香ばしく食欲をそそる。塩と胡椒、それにマスタードのみで、ケチャップはお好みでどうぞというスタイルである。メニューはハンバーガーとチーズバーガーのみという潔さ。長らく下北沢で人気店だったというのも頷ける味である。ちょうどGIGAZINEで紹介されたのでこれから入りづらくなるかもしれない。九州のハンバーガー好きの諸氏、これは行かない手は無いですぞ!
本日のライブ会場の「the voodoo lounge」へと移動。ここは以前、SAKANAのライブで来て以来である。
まだ開場前で待っていると、肘の部分がぼろぼろになったカーディガンに、膝の部分が擦れて破れたジーンズを身にまとったジム・オルークがそそくさと降りていった。
前野健太とソープランダーズ、石橋英子 with もう死んだ人たちのダブルリリースツアーと題された今夜のライブは、同じメンバーを有する二人のアーティストの作品を堪能できるという、一粒で二度美味しい組み合わせ。
まずは石橋英子 with もう死んだ人たち。音盤ではクールで実験的な音楽を覗かせながらもポップな作品に落としこむ印象だが、ライブではメンバーである、もう死んだ人たちのキレキレの演奏の迫力にただただ圧倒されていく。もう死んだ人たちとは、デレク・ベイリー(ジム・オルーク)、ジョン・ボーナム(山本達久)、ジャコ・パストリアス(須藤俊明)、ストラディバリウス(波多野敦子)という、錚々たるメンバーのことで、今日は不在だが、キーボードは滝廉太郎が務めるらしい。この日は、石橋英子が弾きながら歌う。
後半、スペシャルゲストとしてマエケンが呼び出され(出てくるのが遅れたため、セックス中かな?と言われる)、二人で掛け合いのユニークな歌を披露する。まだ入手していない新作は二枚組で日本語と英語の2枚組仕様。日本語の歌詞はマエケンが務めているとのこと。リリースツアーなのに新作を忘れてしまったそうで、この日は入手できなかったのが残念である。
以前の楽曲を披露し、これまた音盤で聴いていたのとは印象が異なるテクニックの嵐に圧倒される。特に山本達久のドラムは以前も京都で見た時に驚かされたが、やはり凄まじいの一言に尽きる。こんな音楽的にも超一級な人たちの演奏を間近で接するなんて、これほどの贅沢は早々ないであろう。
休憩をはさみ、いよいよ前野健太とソープランダーズへ。
さっきのTシャツ姿ではなく、派手なシャツへと“正装”したマエケン、メンバーである石橋英子、山本達彦も着替えている。ジム・オルークはそのままなのがおかしい。
思えば、バンドとしてのマエケンははじめてで、ソロでは再現しづらいような楽曲をキレキレの演奏で肉体的に迫ってくる。その音楽に合わせるかのように、舞踏のような独特な踊りを繰り広げる男性が最前列へ。
思わず、マエケンも反応して、今日は彼の踊りに負けないように演奏したいと思いますと気合の一言。最前列で聴き惚れていたが、視界には彼の踊りが目に入ってきて、時折笑いがこみ上げてしまう。踊りまくる彼ではあるが、ものすごく物腰柔らかく、激しい動きをしているのにもかかわらず、隣にいた僕には一切当たることはなかった。
「オレらは踊る肉の朝」を演歌調にしたアレンジは、「矢切の渡し」などをテレビで歌うぐらい演歌にも傾倒しているジム・オルークならではか。
九州のリサイクルショップのエピソードを楽曲にした小品を披露したり、硬軟織り交ぜていく。メドレー的な流れからの「ねえ、タクシー」にはやられた。
そしてアンコールでおとずれる「東京の空」。いつかバンドとして生で聴きたかった楽曲だけあって、ただただその音に身を委ねていた。逆にソロではいつもやる「ファックミー」はやらなかったり、バンドとソロで楽曲のレパートリーが異なったマエケンの世界が楽しめた。最後の最後に、渡辺淳一追悼で「18の夏」を目の前で歌ってくれた。
「実は今日のメンバーでした!」と、踊りまくっていた男性を称え、「名前は?」と訊くと、男性が嬉しそうにはにかみながら答えたら、「あ、そう」と連れなく返すという、持ち上げておきながら落とすというマエケンのギャグでオチがついた。
ライブ会場限定の石橋英子さんのCDを購入。
- 石橋英子 / tour only limited edition
終演後、近所のファミマからひょっこりジム・オルークがレジ袋をさげて出てきて、思わず「ジムさん!」と声をかけると、キョトンとした後「あ、どうも…」とシャイな反応が返ってきた。ウィルコのプロデュースで、グラミー賞を受賞している世界的なミュージシャンなのに、このあまりにも等身大な姿に改めて尊敬の念を抱いた。
それにしても、濃厚で刺激に満ちた福岡の2日間だった。佐世保でもこういう面白い状況が生まれればいいのだけど。
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