400本近くも撮っているアマチュア監督、荻野茂二とGHQが撮影したカラーフィルムがとにかく衝撃的だった。
抜粋なのでどんな内容の作品かは分からないが、時代劇ではなく、昭和5年当時の風景をユーモアな表現も交えて撮っている。つくづく映画そのものも、時代の記録でもあるんだなと感じる。続いて紹介された昭和7年に撮った作品は、影絵アニメーションに近未来SFもの(!)。すでにフリッツ・ラングの『メトロポリス』はあったそうだが、この時代から空飛ぶ車や工業のハイテク化が未来と関連しているのが面白いし、火星旅行に行くという発想もすでに日本に来ていたのか。いろいろ興味深いし、こういう番組でだけじゃなく、もっと荻野茂二作品に触れる機会があればいいのにと思った。
GHQが撮影した、焼け野原と化している神戸の映像も負けず劣らずとてもインパクトがあった。三ノ宮から神戸に連なる日本最大と言われている闇市の映像。何より凄いのはカラーだということ。終戦直後で物資が不足して混乱期なのに、そういった風には見えず明るい様子ですらある。女性が来ている着物もカラーフィルムで見るととても鮮やかだったりして、これは意外だった。子供たち相手にまさしくギブ・ミー・チョコレートな映像も。カメラを意識して和やかな様子とか、もちろんアメリカ兵が撮影しているからというのが大きいだろうが、こういう生の映像はとても興味深い。
江戸川乱歩が撮ったホームビデオも面白かった。海水浴の様子やたばこを吸っている映像、大根の恥じらいと称して、海女さんの足を写したり、顔のどアップと海を交互に映る編集まで。さながら乱歩流『あまちゃん』か!? 交流のあった横溝正史と和やかな映像もミステリーファンにはたまらないだろうな。友人たちをモデルに、探偵映画を撮ろうとしてたり、相当早い自主映画制作だ。
徳川家の埋蔵映像と題して、昭和5年に、尾張から北海道へ熊狩りに行く様子や、アイヌの映像。昭和4年、海外旅行が珍しい時代の上海の映像。日本より23年早かったトローリーバス。客船の様子や、バタビア(現在のジャカルタ)。市井の人々の営みをしっかりと映し出されている。ローマの競馬場では、イタリア大使であった頃の吉田茂の映像なども。
長門裕之が持っているカメラで撮っている石原裕次郎の撮影風景。撮っている者との距離の近さがよく映し出されている。さながら映画のメイキング映像となっていた。他にもエノケンこと榎本健一、当時31歳のステージの様子や、芥川龍之介があの神経質そうな顔だが、木に登っている映像とかギャップがあって楽しい。与謝野晶子の映像といった盛りだくさんな内容だった。また再放送があれば観たい。もっとこういった映像のアーカイブに気軽にアクセスできれば見方も変わるし面白いのにと思う。
そういえば、「FLAT FIVE」のマスターに、佐世保のアメリカ兵が撮った50~60年代の街の風景をYouTubeで観たんだが、タイトルが忘れてしまって開けず。あれをまた観たいなぁ…。
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