2014年4月18日金曜日

日曜に、いよいよグランドフィナーレを迎える嬉野観光秘宝館への出演をからめて「都築響一さん再び」と題するトークイベントが福岡は大名にある「松楠居」で行われるのを数日前に都築さんのFacebookで知り、慌てて申し込んでみたら、オーナーのSさんがメールにも関わらず、僕のことを覚えていてくださっていたのがとても嬉しかった。一昨年に同じく都築さんのイベントで一回行っただけなのに。

夕方に福岡に着き、少し時間があったので、久々にタワレコでお買い物をする。

  • Tokyo Zawinul Bach/Change Gravity (菊地成孔の盟友、坪口昌恭のグループ。限定特典DVD-R付き)
  • Yannis Rianta/City Whispers (Rhyeに通ずるとされるカナダのアーティスト。タワレコ限定流通)
  • 柳樂光隆/Jazz The New Chapter~ロバート・グラスパーから広がるジャズの地平線 (タワレコ限定ボーナスディスクガイドつき)

気がつけば、特典とか限定流通にすごく弱い自分がいる。5千円以上買うとポイント8倍で実質500円引きだったりするから、前よりも還元率の高さを実感。生き残るためにも大変なんだろうな。

休憩に天神VIOROのスタバへ。対角線上の岩田屋にもスタバがあるのになぜ?と思ったら、スターバックス リザーブという限られた店舗で販売しているコーヒーが味わえるのだそうな。珍しさにつられて注文。一見、スタバならではのローストの濃いコーヒーだが、後味がすっきりとしているところが大きく違った。

ちょうどいい時間になったので「松楠居」に向かう。


今回も玄関はSさんの服による『着倒れ方丈記』状態。


一番前を陣取り、都築響一さんのお姿を発見し、ワクワクしてくる。客入れBGMが歌謡曲調のパンチのある「Sweet Memories」や「いとしのエリー」、「クリスマス・イブ」と素晴らしいので思わずShazamしたら、弘田三枝子『弘田三枝子・じゃずこれくしょん』がひっかかる。もともとBOXが廃盤になって、エラい値段がついているがiTunesにもあるようだ。

まずは京都近代美術館でファッションをテーマにした展覧会で『着倒れ方丈記』も展示されているという。京都近代美術館には、溝口健二の『雨月物語』にも関わっている甲斐庄楠音の作品もあり、なんでも女装するカマ爺さんだったそうで、まず裸を描いてその上に着物を描くという変態チックな作風だったそうだ。噂ではトラック運転手の腕に抱かれて死んだという素晴らしいエピソードもあるとか。
『着倒れ方丈記』の話へ。有名ブランドに取り憑かれ、着倒れる人々の因果な話。風呂なしの六畳二間に住んでいるエルメス好きの男性が、50万もするエルメスの鞄のグリップを汗で汚さないようにタオルのようなものを巻きつてるとか、壮絶な話にやられる。傍から見るとバランスを欠いているけれども、突き抜けているところに清々しさすら覚える。

『着倒れ方丈記』を今の時代に作るのは難しいとも都築さんは語る。ブランドがブランドとしての価値が弱くなった時代、トレンドというのがなくなった時代に突入して、いまは面白い時代に突入しているというのになるほどと頷く。

最新著作である『独居老人スタイル』のお話へ。閉館して50年になる福島県の本宮映画劇場の二代目館主が定年後に自分の映画館をつくろうと、フィルムやポスターを買っていたという。そこで終われば、日本版『ニュー・シネマ・パラダイス』の世界と思いきや、その方が実は成人映画が大好きで、フィルムセンターにも収蔵されていないような作品をコレクションしている上に、フィルムを切り刻んで自分好みに編集して鑑賞していたという。ぜんぜんロマンチックじゃないけど、『ニュー・シネマ・パラダイス』のクライマックスを彷彿とさせる。ポスターのコレクションも見事で、無名で発掘されることもないようなピンク映画のポスターを次々と見せられる。フォトショップでは作れないようなデザイナーといった人間ではなく街の印刷屋がつくったフォントの味わいや構図。アナログな時代ならではの味わいの数々がたまらない。

浅草の写真を撮り続ける鬼海弘雄さんの作品の紹介。いつも違う服を着て立っていたという、チェリーさんという有名な売春婦。映画にもなったヨコハマメリーさんと被るイメージだ。去年亡くなったそうで、いつも立っていた場所に誰が置いたか知らないが、花とヤクルトが添えてあったといういい話。だが、そのヤクルトが飲まれてしまうというオチつき。

山谷のドヤ街のおじさんと仲良くなって、半ば公式写真家となっている多田裕美子さんの話。まだ写真集という形にはなってないそうだが、山谷の親父たちの顔つきが何ともたまらない。いつか出るであろう写真集が楽しみ。

青森のボロ布文化について編んだ、『BORO』の話。もっとも貧しかったという青森の貧農の労働着のことで、一生に上下2着持っていればいいほうで、青森は木綿が採れず、絹か麻しかない。絹は高価なので無理。となると、麻しかない。麻を寒い青森の地でどうしたかというと、ミルフィーユ状に重ねていった。デザインを意識しないで、何十年もつぎはぎで40年50年も経た、BOROはキルトの作品といっても過言ではない圧倒される。BOROの存在を広めた民俗学者、田中忠三郎さんの話もとても興味深い。

衝撃を受けたのが、仙台あたりに僅かに現存するバンカラの話。決して、どおくまんなどのマンガだけの世界ではなく、21世紀に入り、このテン年代にも残っているとは…感動的ですらある。まだまだ知られていないことだらけなのだな。何代も前の先輩の服を受継ぎ、着ている生徒の顔はどこか引き締まって見える。

最後に、「JUN ROPE」のCMの動画で〆。「JUN ROPE」がどんなブランドか知らなかったが、CMはまるで洋画のような雰囲気のある味わいで、これが当時、深夜放送とかで流れていたかと思うと、昔の方がある意味、すごくリッチな感じがしてしまう。



そのまま懇親会となり、酒を飲み交わしたい気持ちをぐっと堪え(車で来たので)、持参した都築さんの本にサインをもらったりしているうちに、他の人とも仲良くなるこのアットホームな雰囲気がたまらない。

お開きとなったが、Sさんのお言葉にそのまま甘えて、打ち上げという名の食事会に参加させてもらう。ホルモンをつまみながら、さながらオフ会という感じでとても楽しかった。
遊園地のアトラクションではない、お化け屋敷といった見世物小屋的な出見世がならぶという、箱崎のお祭り「放生会」は今年、是が非でも行かねばなるまい!なぜか話題にのぼった牧のうどんの天ぷらバージョンとも言えそうな、チェーン店「天ぷら ひらお」にとても興味がわいた。ラーメン屋で言うところの紅しょうがというおかわり自由なポジションになぜか塩辛という感じとか。都築さんに紹介できる案件はないかとこちらも佐世保の24時間営業の「みぞぐち」の話をしたら、興味を示してもらった。いろんなアンテナを張り巡らせて生活せねばと実感。

お開きとなった時間がすでに夜中にもかかわらず、興奮は覚めやらぬままハイテンションのまま佐世保へと帰路についたのだった。

改めて都築さんは最も尊敬する書き手の人だなと再認識。もっと精進せねば…(何を!?)。

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